れみ姐さんの小部屋

脳内垂れ流しております。

アイドリング(4)

 翌日は休日だった。目が覚めると、いつも通り彼は床に座って眠っていた。ふう、と溜息を吐きながら彼女はシャワーを浴びた。
 ふくよかではないけれど決して細いとも言えない自分の身体が、彼女のコンプレックスだった。入浴時間は出来るだけ手早く済ませ、どうにか裸を見ないようにしたかった。烏の行水宜しく、ものの10分もすれば彼女はリビングまで戻っている。日に拠ってはドライヤーもしない。身支度、特に人目につかないところへは全く執着がない。
 しかし、何故だか生理の時は身綺麗にしておきたくなる。毛抜きで、しかめつらのまま、鏡と格闘しながら、兎に角、抜く。お陰で翌日は肩凝りが酷くなる。しかし腕を真っ直ぐに上げた時のざらつきの無さはその痛みを遥かに超える達成感、彼女は一言も喋らずに抜き続ける。抜き終えると、次にペディキュアを塗りたくなり、塗り終わると、眉を整え、整えると、化粧をしたくなる。彼女が脇の毛を気にした時間が例え何時であろうと、順序をもって辿り着けば、夜中の3時にきっちりした化粧が仕上がる。それでひと月のリセットが完了する。剥がれ落ちる胎盤と共に一度死に、生まれ変わった気分になるのだ。
 「あっ…」と彼女は無意識に声を漏らした。体液が太ももを伝った。生理でもないし精液でもない其れは、未だに何と呼んで良いのか判らない存在だった。恐らく周期からすると卵子だろう、と彼女はうっすらと考えていた。排卵している。なんて、動物的な感覚だろう。
 「気持ち悪。」